観たことない???22006年06月12日
根津甚八です。雨の多い季節がやってきましたが、いかがお過ごしでしょうか? 今回は、全仏オープンともドイツのワールドカップとも何の関係もない前回の続編です。
「うちの芝居も観ないでだよ、決められないだろ、こういう人生の一大事を!!!」
受話器からの声が明らかにワントーン高まった。
(ウッ、まずい。この気まずい間を何とかしないと)何か言わなくちゃ…しかし、焦れば焦るほどドツボにはまってゆく。言葉につまる。
(こりゃ、駄目だ、これでオジャンか。ああ、このままでは電話を切られてしまう)と思っていたその時、意外な言葉が返ってきた。
「……あのね…来週のね、日曜の6時から、新宿のタイソウジというお寺で公演があるから、それを観て、まだうちに入りたいようだったらまた電話しなさい」
「そうですかっ、あ、ありがとうございます」
公演場所と時間を確めて電話を切った。
この電話で指摘されるまで、俺の中には前もって状況劇場の芝居を観ておくという発想のカケラさえなかった。つまり、入社試験を受けようというのに、目指す会社の実態もロクスッポ調べないで「御社に入りたいんですけど」と言ってるのも同然、見合い相手の写真も見ずに「この人とお見合いしま~す」と一方的に叫んでるのも同然なのだ。相手が機嫌を損ねるのは至極当然。だからといって、「あ、すみません。ド忘れしてました、観たことあります」というような咄嗟のウソも出てこなかった。正直、俺は唐さんの芝居をただの一度も観たことがなかったのだからしかたない。いや、観る必要性を感じなかったというほうが正確かもしれない。
唐さんの本は全て(といっても当時は『腰巻きお仙』と『ジョン・シルバー』の2冊しか出版されてなかった)何度も繰り返し読み、「特権的肉体論」に心酔し、その実践者になるんだと心の決め(いま思い返すと笑っちゃいますね)「腰巻きお仙」を無断で上演したりしていた。性来思い込みの激しい質なものだから、「唐十朗の演劇スピリットは、すでに俺の肉体にしみ込んでいるのだ」と思い込んでいた。なんと言う不遜な思い上がりだろう。しかし、まだケツが青かった根津くんは、本気でそう信じ込んでいたのだ。
つづく
でも、この頃つくづく思います。若さゆえの思い上がりって大事です。極端なことを言えば、社会的責任の比較的軽い20代にこそ、弾けて思いっきり生意気やんなきゃ駄目です。自分をどこまでぶん回せるか、試せるだけ試せる貴重な年代だと思う今日この頃です。
では、またお会いしましょう。
「うちの芝居も観ないでだよ、決められないだろ、こういう人生の一大事を!!!」
受話器からの声が明らかにワントーン高まった。
(ウッ、まずい。この気まずい間を何とかしないと)何か言わなくちゃ…しかし、焦れば焦るほどドツボにはまってゆく。言葉につまる。
(こりゃ、駄目だ、これでオジャンか。ああ、このままでは電話を切られてしまう)と思っていたその時、意外な言葉が返ってきた。
「……あのね…来週のね、日曜の6時から、新宿のタイソウジというお寺で公演があるから、それを観て、まだうちに入りたいようだったらまた電話しなさい」
「そうですかっ、あ、ありがとうございます」
公演場所と時間を確めて電話を切った。
この電話で指摘されるまで、俺の中には前もって状況劇場の芝居を観ておくという発想のカケラさえなかった。つまり、入社試験を受けようというのに、目指す会社の実態もロクスッポ調べないで「御社に入りたいんですけど」と言ってるのも同然、見合い相手の写真も見ずに「この人とお見合いしま~す」と一方的に叫んでるのも同然なのだ。相手が機嫌を損ねるのは至極当然。だからといって、「あ、すみません。ド忘れしてました、観たことあります」というような咄嗟のウソも出てこなかった。正直、俺は唐さんの芝居をただの一度も観たことがなかったのだからしかたない。いや、観る必要性を感じなかったというほうが正確かもしれない。
唐さんの本は全て(といっても当時は『腰巻きお仙』と『ジョン・シルバー』の2冊しか出版されてなかった)何度も繰り返し読み、「特権的肉体論」に心酔し、その実践者になるんだと心の決め(いま思い返すと笑っちゃいますね)「腰巻きお仙」を無断で上演したりしていた。性来思い込みの激しい質なものだから、「唐十朗の演劇スピリットは、すでに俺の肉体にしみ込んでいるのだ」と思い込んでいた。なんと言う不遜な思い上がりだろう。しかし、まだケツが青かった根津くんは、本気でそう信じ込んでいたのだ。
つづく
でも、この頃つくづく思います。若さゆえの思い上がりって大事です。極端なことを言えば、社会的責任の比較的軽い20代にこそ、弾けて思いっきり生意気やんなきゃ駄目です。自分をどこまでぶん回せるか、試せるだけ試せる貴重な年代だと思う今日この頃です。
では、またお会いしましょう。
投稿者 根津甚八 19:12 | コメント(11)| トラックバック(0)
これ、実話!?!マジ笑えますなぁ。(失礼)
で、締めが渋い!!
早く早く続きお願いします。
そして締めの言葉、20代のときに遠慮していると後で後悔しますもんね。
次回を楽しみにしています。
シレーっとして、なかなかいい味だしてますねぇ。
自分のブログに根津さんのことを書いて
(良く書いているのですが・・・)
検索したらこちらを発見し、感動してます!
大げさでは無く、本当にしょっちゅう
「根津さんはお元気かな?」と思っていたので
(先日は「吉原炎上」を観たんです)
ブログなんて!嬉しすぎます。
更新、時々でもいいです。楽しみにしてまス。
これまでの観察結果からすると、20代までに人生を考え、チャレンジしたことのない人間はいつまで経ってもダメじゃないか、と思われます。室内ペイントという新たな文化の普及に挑戦する秋山夫妻を、どうぞ応援してあげて下さい。
その頃は意識していなかったけど、今から思えばメチャクチャ大胆に行動的してたんだー!と友達にも驚かれてしまいました。
根津さんと同じ、若い頃にしか出来ない貴重な経験を積んできて良かったなぁ~としみじみ思いました♪
でもやっぱりケツは相当青かったかも~~σ(^◇^;)
続き、楽しみでーす!
このブログで根津さんを見つけて涙が出るほど嬉しかったです。バイクにフライと私と同じ趣味で、親しみを感じてました。2年ほど大変でしたでしょうが、こらからのご活躍を楽しみにしてます。
小生はドイツ駐在であり、根津さんブログの更新を楽しみにしてます。
まさか状況劇場入団のいきさつを拝読できるとは思っていなかったので、毎回ドキドキしながら続きを楽しみにしています
次回はいよいよ唐さんとのご対面でしょうか?
早く読みた~い(*´ェ`*)