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根津甚八プロフィール
俳優。75年「娘たちの四季(フジテレビ)」でエランドール賞を受賞。同年「濡れた賽の目」で映画デビュー。80年黒沢明監督の「影武者」に出演。82年「さらば愛しき大地」でキネマ旬報主演男優賞、日本アカデミー賞主演男優賞受賞。85年に再び黒澤明監督の「乱」に出演し世界的評価を得る。近年は舞台を中心に精力的に活動している。
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このぉ、オオカミ少年!2

皆さん、いかがお過ごしでしょうか? 根津甚八です。

もう秋の虫が鳴き始めましたね。
毎年この時期になると、我が家では近くのペットショップから〈鈴虫〉を3、4匹買って来て庭に放します。〈鈴虫〉の鳴き声、和みますよ。

では、「このぉ、オオカミ少年!2」の始まり、始まり~~~。

ビールでのホロ酔いのせいで、今日からベルリンの夜を楽しむに違いないと、3人を妬む気持ちが吹き出した。
そして、メッチャ面白い悪戯を思いついてしまったのだ。
O君に公衆電話のかけ方を教えてもらい、即実行!

泊まっていた西ベルリンのホテルに電話して、マネージャーとTさんの部屋をコール。 
プルルル~、プルルル~・・・、(う~ん、出掛けちゃってるかなあ・・・)と、諦めかけた時、出ちゃったんだなあ、これが。

「ハロー?」
「あ、Tさん? 俺だよ、俺。」
「おお、どうしたの?」
「・・・うん、それがさあ、大変なことになっちゃったんだよ。」
「・・・?」
「あのさ、・・・飛行機に乗り遅れちゃったんだよ!」
「へ???」
「だからあ、成田行きの便にね、乗り遅れちゃったんだよお!!!」
「えええええっ!!!!!  ホントかよ!!!!! ・・・どうしよう・・・だって、東京に着いたら、すぐ大島行きだろう?  ああ、どうしよう・・・
でもマネージャーのIさんも、今いないしなあ・・・どうしたらいいんだ・・・」
「・・・へっへっへっ、ウソだよ~~~ん」
「はあ?」
「いやあ、うまくいったなあ、ヒャッヒャッヒャッ(大笑い)」
「何だよ、もう」
「いやいやいや、実は、もうすぐ国際便に乗るところっ。あのさ、Tさん達の帰りの便は俺のと同じでしょ? だったら、フランクフルトでのトランジットタイムがスッゲエ長いからさ、一旦空港出て、市内見物したら良いよお。じゃ、先に帰ってるからあ~」

悪戯電話大成功! 気分もスッキリとO君の待つテーブルに戻った。

さらば愛しき大地


「じゃ、僕はそろそろケルンへ向かいますんで。」
「そう。今日はいろいろとありがとう。日本に来ることがあったら、連絡して」
「ありがとうございます。あ、根津さんは、あと20分ぐらいユックリしてて大丈夫ですよ」
「あ、そう。じゃ、残ってるビール空けてから行くよ」
「それじゃ」

と、彼は、にこやかにケルンのお祭りへ向かって行った。

時計を見ると、出発時間の30分前である。
(さてと、ボチボチ仕事が待ってる日本へ向かうとするか)
パスポートコントロールを通過し、成田行きが待機してる36番ゲートへと、一直線の長い廊下歩き出した。
ゲート番号の表示板は、1番から始まっている。
行けども行けども36番は見えてこない。(何だよ、こんなに遠いの)
少し早足になる。廊下の両サイドに見える番号はまだ10番台。
(これは、チョット遠過ぎだろう)腕時計を見ると、20分前。さすがに焦り始める。俺はは全速で走り出した。(ひょっとして、36番ゲートって、一番奥かあ?) 

後で知ったんだけど、フランクフルト空港は当時ヨーロッパで一番デカイ空港だったんだって。O君、何で教えてといてくれなかったんだろ? 彼もビールで頭をやられてたのかな?

息も絶え絶えで、突き当たりの36番ゲートの前にやっとたどり着いた。

しかし、ゲート前に並んでる椅子には誰一人いない。閉じられたゲートの前に、警官風の制服制帽姿の大柄な男が一人立っているだけ。大きなガラス越しに俺が乗るべき飛行機はまだいる。だが、ナ,ナ、ナント乗客が乗り降りする時に伸び縮みする屋根付きの廊下(あれ、何て名前なんだろう?)、そ、それが、機体から離れてるのではないか!!!!!

(これはヤバイって! 絶対にヤバイ!!! )

こうなったら警官か何だか分からないが、目の前の制服男に頼み込んで乗せて貰うしかない。俺は必死にブロークンイングリッシュで懇願した。

「エクスキュウズ、ミーッ! アイ マストゥ ゴー トゥ ナリタッ バイ ジス フライト! プリーズ オープン ディス ドアッ!!!」
「△※◎□▲○・・・ペラペラ、ペラペラ・・・」
(え~い、糞っ、何言ってんだか全然わかんねえよ)
「・・・☆★◯※・・・ハイジャック・・・●△◆☆○※・・・」

(ハイジャックって言ってるな。そうじゃないって。見りゃ分かるだろ!ただの客だって。飛行機そこにまだ止まってんじゃん!! 何とかなるだろう!)

「ア、アイ マストゥ ゴー ジャパンッ トゥデイ!(んもうっ、絶対なんだよ)アイ マストゥ!!!!!」
「・・・???」
「ビコウズ マイ ビジネス! アイ マストゥ ゴー トゥ ドゥ ビジネス!」

奴は相変わらず落ち着き払っていて、冷ややかに言い続けた。

「ノウ・・△※○☆●・・エアアメリキャン△◆◎・・カウンター・・」

(こいつは、何があっても揺るぎそうも無い。俺を乗せるつもりなど全く無い。諦めるしかなさそうだ。)
仕方なく、俺は決断した。この制服男との交渉はもうやめよう、これ以上どう詰め寄ったって埒が開かない。
奴の側を離れ、近くの椅子に腰をおろした。ガラス越しに止まっていた飛行機が、ゆっくりと動き出していた。一巻の終わりだ。
ただ見送るしかない、俺。こんなところで、ただ独り。

(これで、役者になってから、初めて自分の仕事に穴を開けることになる。
ああ、なんてこった!! どうしたら、いいんだ? 一体、どうしたらあ????)

なんか、また長くなってしまいました。ま、ブログに規定原稿枚数ってないから、ノリが入るとつい伸びてしまうんですかね。
ってことで、続きは次回です。
しか~し、一週間後とは限りませんよ。先週の金曜日のようなことも、大いにあり得ます。ま、今のところ基本的には二週間に一回の定期更新ですが、イレギュラーもありでいきますので、よろしく。

コメントを寄せて下さる皆さんへ。

いつも楽しみに読ませて貰ってます。昔からの俺のファンの方、同世代の方、意外に若い方、またブログで俺を知った方、読んで下さった方からのいろんなコメントに励まされてます。凄く嬉しいです。ブログという新しいコミュニケーションツールに出会えて良かったと、つくづく実感しています。ありがとうございます。これからも宜しくお願いします。

では、またお会いしましょう。
投稿者 根津甚八 08:16 | コメント(14) | トラックバック(0)
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